昔と違い、食べ物や飼育環境および飼い主さんの健康に対する意識が向上した為、犬および猫の平均寿命が伸びました。その結果、人と同じような病気も増えつつあります。心臓病、腫瘍そして今回お話する腎臓病が多いと感じます。腎臓は数十万ものネフロン(腎小体、糸球体および尿細管を含めた腎臓の機能の単位)が存在します。慢性腎臓病は様々な原因により、そのネフロンが傷ついて機能しなくなる病気であり、数ヶ月から数年かけて進行性に悪化が見られる不可逆的な腎機能不全です。主な症状はネフロンの傷ついた割合にもよりますが、多飲、多尿、食欲低下、嘔吐、下痢、便秘、元気消失、体重減少、口内炎、貧血、膀胱炎など様々な症状を呈します。末期では痙攣発作および昏睡の後に死に至る恐ろしい病気です。 腎臓の検査と言うと血液検査を思い浮かべますが、その他に身体検査、エコー図検査、レントゲン、尿検査などがあります。心臓の検査と同じ様に腎臓の検査でも得意不得意があります。一般的な血液検査では、ネフロンのダメージが75%以上無いと(残りのネフロンが25%以下でないと)わかりません。例えば、血液検査だけで腎臓が大丈夫と言われても、本来の腎機能は30%しかない場合もあります。その為、その他の検査を行い総合的に判断する必要があります。身体検査では、栄養状態、循環状態、脱水の程度、貧血の有無、猫の場合は触診での腎臓の大きさや形などを調べます。エコー図検査では、腎臓のサイズ、表面の状態および内部構造などを調べます。レントゲン検査はサイズおよび結石の有無などを調べます。尿検査では、尿の濃さ、尿タンパク、出血、尿糖の有無を見たり、顕微鏡下で膀胱炎、結晶、円柱などの有無を調べます。各検査の欠点を補い慢性腎臓病かどうか判断します。その中でも尿検査は動物の負担にならず、尿さえあれば15分程で結果がわかる簡単な検査です。もし、気になる点があれば、朝一の尿を持って来院して下さい。 P9230877.JPG この写真は尿検査で重要な尿比重を調べる機械です。人の尿比重計で調べると測定結果が異なるので、動物専用の比重計でなければいけません。